先日、第二回目の『ナヌムの家』上映会が行われました。
キボタネの河庚希運営委員の報告を以下に掲載します。
2018年9月2日(日)
トークゲスト 古居みずえさん(映画監督)
聞き手 川田文子(キボタネ顧問)
矯風会館ホールにて
この映画は、姜徳景さんが肺癌の診断を受け、亡くなるまでの日常を映像作品にしたものだ。
姜徳景さんは、1929年慶尚南道晋州で生まれ、16歳の時に勤労挺身隊第1期生として富山県の工場で働くことになったが、過酷な労働と空腹に耐えきれずに逃げ出し、日本の憲兵に捕まり、強姦され、そのまま慰安所へ連行される。約1年後、解放を迎え帰国。釜山などで食堂の仕事、家政婦などをし、1992年に日本軍「慰安婦」被害者として名乗り出る。
『ナヌムの家I』と大きく異なるのは、この映画が姜徳景さんや他のハルモニたちのリクエストによって始まったプロジェクトだという点だ。「客体」としてではなく、「主体」としてのハルモニたちの生き生きとした姿がいつまでも頭から離れない。食事や会議、農作業、飼育小屋の掃除など日常の生活の中に、彼女たちの「知ってほしい」「忘れないでほしい」という切実な思いがあふれている。
「牛のように一生懸命働く人」として記憶されたいハルモニ。「死ぬ死ぬ」と言いながら毎年種をまくハルモニ。そして「この映画を、後でたくさんの人が見るように、あの世に行っても祈ってるよ」という姜徳景さん。「慰安所」、そして「その後」を必死に生き抜いたハルモニたちの切実な願いを、丁寧に切実に描いたドキュメンタリーを観た後は、キボタネ 顧問の川田文子さんとドキュメンタリー作家の古居みずえさんが「戦争が何を壊すのか」というテーマでお話くださった。古居さんの映像を交えながら、「平凡な生活」―とくに女性や子どもたちなどの弱者の―が戦争によって壊されていく様子、また戦争が「終わって」もなお続くトラウマや傷の深さを改めて考えさせられた。
10代の青春を奪われ、人権を蹂躙されたハルモニたち、戦争や紛争によって故郷を奪われたパレスチナやウガンダの難民、そして3.11以降、避難を余儀なくされた飯舘村の住民。安心して学校に通ったり、自分の土地を耕して、愛する家族を養う権利を奪われたこれらの人々は、生まれた国や時代は違うが、みな国家に翻弄され、居場所を失った民だ。
生きることを決して諦めず、沈黙をやぶり、語り続けていたハルモニたちの物語は完成から20年以上たった今でも、世界中の性暴力のサバイバーに勇気を与えつづけている。
<次回予告>
第3回 『息づかい』 (1999年、77分、日本語字幕 パンドラ配給)
2018年10月 7日(日)14:00開場 14:30開演~17:30
矯風会館ホールにて
トークゲスト 石原燃さん(劇作家)
聞き手 北原みのり(キボタネ理事)
石原燃さん
劇作家。劇団大阪創立40周年戯曲賞対象、第24回テアトロ新人戯曲賞受賞。2011年には原発事故直後の東京を描いた短編『はっさく』がNYのチャリティー企画「震災SHINSAI:Thester for Japan」で取り上げられ、全米で上演された。近年の主な作品に、従軍「慰安婦」だった日本人女性ヘルと「私」を描いた一人芝居『夢を見る』、NHK番組改ざん事件を扱った『白い花を隠す』(同作品で演出の小笠原響氏が読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞)などがある。
今、再び出会う『ナヌムの家』3部作 連続上映会の最終回になります。
是非とも、足をお運びください。
チケットはhttp://eplus.jp/sys/T1U90P006001P0050001P002261588P0030001P0007でご購入ください。
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