韓国「ナヌムの家」に暮らす姜徳景(カン・ドッキョン)さん、金順徳(キム・スンドク)さんなど日本軍「慰安婦」被害者たちが描いた絵は、1990年代中頃に発表されて人々に衝撃を与えました。彼女たちが描く故郷の風景や日本軍人の姿、幼い自画像からは心の叫びが聞こえてくるかのようでした。しかし、それがどのように描かれ、彼女たちにとってどのような意味があったのかについては、あまり知られていなかったのではないでしょうか。
2018年に韓国で出版された『咲ききれなかった花』は、それを解き明かしてくれる本です。被害女性たち(ここではハルモニと呼びます)に絵画で自己表現するきっかけを与えたのが、この本の著者イ・ギョンシンさんだからです。美大を卒業したばかりの若い女性がおそるおそる「ナヌムの家」の門をくぐり、ハルモニたちの心の扉にノックし続け、扉が少しずつ開けられていく過程が、この本の中に詰まっています。