
【キボタネ連続講座】韓国の女性運動から学ぶ 性暴力・性搾取に反対する運動の現場から(全4回)
更新日:5月10日
2022年のキボタネ連続講座は韓国の女性運動を学びます。
キボタネではこれまで性暴力・性搾取に反対する韓国の女性運動団体と交流を深めて来ました。その過程で私たちが見てきたものは、被害女性たちのケアや世論喚起をしながら、問題解決のための法律制定運動に力を注ぎ、法制定後は直ちにその法律の運用を監視し、不足点を補うための改正運動に入る姿です。今回の連続講座ではそれぞれの団体から関連法の制定過程と現在も続けられている改正運動を中心にお話を伺います。そこから、韓国の性暴力・性搾取の現状、被害者たちの訴え、そしてこれを根絶するために闘ってきた女性たちの姿が見えてくるはずです。
女性家族省の廃止などを公約に掲げた尹錫悦氏が大統領に当選したことで、今後、韓国の女性運動は試練の時代を迎える可能性が高まっています。そのような状況下で今後の運動の展望と、私たちに可能な連帯についても語り合いたいと思います。是非ともご参加ください。
開催方法:ZOOMによるオンライン配信
※見逃した方のために後日配信を行います。期間は約1ヵ月(次回講座前日まで)となります。
参加費
学生 :無料
一般 :各回1000円
寄付者:各回900円
※2021年5月以降の寄付者(年間1万円以上)の方には別途クーポンをお送りします。
クーポンの利用法については、クーポン送付の際にご説明します。
お申込み
【全4回まとめ買い】
【第1回】
日時:2022年5月10日(火)19時〜21時
「韓国の反性暴力運動の現場から~『暴行・脅迫の証明』から『同意の有無』へ、強かん罪改正運動を中心に」
講師:イ・ミギョンさん(韓国性暴力相談所理事)
【第2回】
日時:2022年6月14日(火)19時〜21時
「韓国のサイバー性暴力根絶運動の現場から~『n番部屋防止法』を中心に」
講師:ソ・スンヒさん(サイバー性暴力対応センター代表)
【第3回】
日時:2022年7月19日(火)19:00~21:00
「性購買の需要を遮断するために~『性売買処罰法』改正運動を中心に」
講師:イ・ハヨンさん(性売買問題解決のための全国連帯共同代表)
【第4回】
日時:2022年8月23日(火)19:00~21:00
「10代の女性たちを性搾取から守るために~『児童・青少年の性保護法』改正運動を中心に」
講師:チョ・ジンギョンさん(十代女性人権センター代表)
講座と講師の紹介
イ・ミギョンさんと韓国性暴力相談所
1991年4月13日開設。当時の韓国で性暴力は「私的な」「重要ではない」こと、「恥ずかしい」性の問題、「女性の貞操に関する問題」あるいは「女性たちの嘘」として扱われ、問題視されていなかった。性暴力は「性的自己決定権の侵害」であるという問題意識はおろか、「性暴力」という言葉すら聞き慣れない時代に立ち上がった女性たちが設立し、1993年3月、ソウル市から社団法人の認可を得た。イ・ミギョンさんは、その設立メンバーの一人で、総務、副所長、所長を歴任し、現在も理事として関わり続ける。 性暴力相談所は、性暴力特別法(1993年12月制定、1994年1月施行)の制定運動とその後の継続的な監視活動、#Me Too運動、堕胎罪廃止まで、常に韓国の性暴力反対運動の中心で闘ってきた。そして現在、韓国で進む強かん罪改正運動の中では、強かん罪の成立要件を「暴行・脅迫の証明」から「同意の有無」に変えなくてはならないという運動が展開されている。まさに日本と同じ課題を抱えて韓国でどのような議論と運動が展開されているのかを、中心的に聞く。
ソ・スンヒさんと韓国サイバー性暴力対応センター
韓国サイバー性暴力対応センターはリベンジポルノ、盗撮などオンライン空間における性暴力・性搾取が深刻な問題として浮上する中、ソ・スンヒさんを代表として2017年に発足。その後、n番部屋事件が起きる。同センターは、韓国性暴力相談所、性売買問題解決のための全国連帯などと共に「テレグラム性搾取対応共同対策委員会」を発足して、被害者支援や再発防止、問題の公論化など複合的な対応に取り組んだ。 n番部屋事件後、違法撮影物を流布・購買した場合だけでなく所持したり視聴するだけでも処罰される刑法・性暴力処罰法・児童青少年保護法などの法改正が実現。「n番部屋防止法」と呼ばれている。オンライン性犯罪に対する処罰範囲が大幅に拡大され、処罰の基準も引き上げられたが、一方でデジタル性犯罪が見えにくくなり個人化して犯罪の手法がより緻密に、悪辣になっているとも言われる。n番部屋防止法については尹錫悦大統領当選者が候補当時、「検閲」と見なす発言をしていたことから、尹政権の下で法の見直しがあるのではないかという「期待」が関連業者などから出ている。厳しい時代を迎えるサイバー性暴力対応センターのこれまでの活動と今後の展望を聞く。
イ・ハヨンさんと性売買問題解決のための全国連帯
「性売買問題解決のための全国連帯」(以下、全国連帯)は2004年6月9日に発足した。全国連帯発足前から、韓国では各地の性売買集結地にアウトリーチ活動や法律諮問活動、相談事業など性売買女性を支援する団体があった。それを束ねる全国的なネットワークで、全国13地域に会員団体を持つ。相談所ネットワーク、シェルターネットワーク、自活ネットワーク、当事者ネットワーク「ムンチ」があり、活動家の力量強化や政策ワークショップ等を実施している。この全国連帯事務局のあるソウルに、付設女性人権センター「ポダ」が設置されたのは2016年11月。ソウルの性売買集結地女性たちに対する相談活動が本格的に開始された。イ・ハヨンさんは現在、全国連帯の共同代表であると同時に、「ポダ」の所長でもある。 そして今年3月22日、230の女性団体、市民団体が結集して「性売買処罰法改正連帯」が発足。その事務局の役割も担っている。現行の性売買処罰法が「性売買被害者の性売買は処罰されない」としながら、被害を立証できない女性については「行為者」と見なして処罰している現実に異議をとなえ、「女性を商品化して莫大な利得を得ている斡旋者と購買者らを処罰する法として施行されなければならない」と主張している。この最新の動きを中心に、これまでの取り組みについて話を聞く。
チョ・ジンギョンさんと十代女性人権センター
2011年、「サイバー同世代相談室」活動を開始。2013年、団体名を「十代女性人権センター」に変更。代表のチョ・ジンギョンさんは大学卒業後、「韓国教会女性連合会」で性産業に取り込まれた外国人女性を支援する活動をする中、2002年にダンサーとして働くため年齢を25歳と偽って入国した15歳のフィリピン人女性が業主にレイプされる事件に遭遇。これを機に基地村の実態調査をおこない、性売買の現場で性を搾取される女性たちの問題にのめり込んで行く。そして、このような「性売買の構造化されたシステム」に10代の少女たちが取り込まれる現状に楔を打とうと十代女性人権センターの活動を開始した。 2004年に「性売買防止法」が制定・施行されたが、10代の女性たちに適用される「児童・青少年の性保護に関する法律(児青法)」には性売買防止法に規定された保護体系が整えられていない。十代女性人権センターは同法改正のための運動をしながら、10代の女性自身が相談員として活動する事業や、相談をした10代の女性たちが自身を尊重することができるように支援する活動などを展開している。今回は「児青法」改正運動を中心に、10代女性人権センターの取り組みについて話を聞く。